売上至上主義が陥るワナ

「毎年売上が増えているのに、どうしてこんなに利益が少ないんだろう」

「売上が上がっても、思ったほど利益が出ない

こんな風に感じたことはありませんか?

「売上が増えれば自然と経営も良くなる」と考えている人は多いです(一般的に「売上至上主義」と呼ばれています)。

しかし、多くの仕事を引き受けたり、多くの商品を売ったりすることが必ずしも利益の増加につながるわけではありません。

売上を伸ばすために全力を尽くしても、なかなか利益が増えないケースは少なくありません。
むしろ売上を追い求めるほど、利益率が低下し、資金繰りが悪化し、社長も社員も疲れ果ててしまうこともよくあります。

今回は、売上至上主義の弊害と対応策についてご紹介します。

目次

売上至上主義の問題

あるドンブリ会社の事例です。

この会社は、昨年、売上を大幅にアップさせましたが、利益は売上アップ前とほとんど変わりませんでした。

そこで、今期も売上増を目指して頑張ったのですが、残念ながら売上はアップ前の水準に戻ってしまいました。

すると、売上は2年前と同じなのに、利益は当時よりも少なくなってしまったのです。

なぜこんなことが起こるのでしょうか。

売上至上主義の問題

その会社は、売上目標を設定していました。

しかし、売上目標を達成するために、営業部門が受注しやすい低価格で受注してしまいました。
そのため、利益がそもそも出にくい体質になってしまっていたのです。

また、売上が増えるということは、仕事量も増えます。
売上を増やそうとすることによって会社が抱えられる労力などの容量を超えてしまい、現場が疲弊しまう。
従業員としては、仕事そのものが増えているのに利益が出ていないので、どれだかがんばっても給料は増えず、自然とやる気も低下します。

こんな悪循環に陥る会社が少なくありません。
経営者の気持ちとして、「売上高が会社の規模を証明するものだから、売上を増やしたい」、「遊ばせておくのはもったいないから、安くても受注しよう」と考える気持ちも理解できます。

しかし、売上にこだわりすぎて、利益が確保できない工事を受注してしまうと、利益が出ないばかりか、従業員の疲弊やつながりかねないので、注意が必要です。

売上ではなく限界利益に着目する

ではどこに着目するとよいのでしょうか。

答えは、「限界利益」です。

限界利益(下図の③)とは、①売上から②変動費(売上に比例して増えたり減ったりする費用です)を引いた金額でした。

お金のブロックパズル
図1 お金のブロックパズル

お金のブロックパズルとは?」でもご紹介した図1を見てもわかるとおり、⑤人件費、⑥その他の固定費、⑦利益の原資は、③限界利益です。

限界利益に着目する効果

限界利益に着目することで、社長や社員が売り方や作り方を考えるようになるからです。

シンプルに「利益を得るためにはどうするか?」と考えるようになります。


例えば、営業部門が仕事を引き受ける場合、利益がどれだけ得られるかを考えるようになるため、採算度外視の仕事は受注しなくなります。
薄利の仕事も減ります。
その結果、受注する仕事の利益率が良くなり、利益が増えやすくなります。

工事部門も利益の目標を達成すれば賞与等に反映されることがわかると、自発的に効率化などの工夫をするようになります。

そのため、年間の限界利益の目標を立てることを推奨しています。

従業員とも限界利益で会話する

従業員とも売上ではなく、限界利益で目標管理を行うことをおススメします。

限界利益で会話する目的は、スタッフに「自分たちがどれだけ会社に貢献しているか」をきちんと認識してもらうためです。

自分の貢献度を、売上ではなく限界利益で考えるスタッフ」を育てることが、会社の底力を発揮するための大前提であり、経営者の大切な仕事の1つです。

私のコンサルティング経験から言うと、「自分の給料は会社の限界利益から分配されている」ことを社員がきちんと理解すると、会社は次のような状態に近づいていきます。

まず、社員が自立的に自分の給料に見合った限界利益目標や売上目標を考え始めます。

そして、このような社員が増えると、社長が逐一ノルマを提示しなくても、会社に適正な売上が確保されるようになります。つまり、社員が自分の給料を自ら稼ごうとするので、社長はそうした苦労から解放され、精神的にラクになります。

そのための教育方法は、月次の会議でお金ブロックパズルを紙に何度も書いて、今期の目標と実績を確認しあいます。

そして、幹部はスタッフに対して「給料の3倍以上の限界利益を作りなさい」を口癖にします(自分の報酬プラス会社の経費、利益を考慮すると、それくらいは必要です)。

スタッフもいくら稼げばいくらもらえるのか、目指すゴールがハッキリすれば、それに向かって頑張れるのです。

売上目標を目標にする場合もある

売上より限界利益を目標にしましょうと言ってきましたが、売上を目標にするケースもあるので紹介します。

私の支援先の1社である建設会社は、ある理由があって売上目標を設定しています。
その会社は、建設業界のピラミッド構造の比較的上層の会社なので、下請け会社を抱えています。

この会社の社長は、「限界利益を目標にすると、下請け会社を値切ろうとする懸念がある。
短期的には利益が出るかもしれないが、協力してもらえなくなってしまう。
下請け会社もチームの一員であり、彼らの給料を稼ぐ意味でも売上を目標としている」と考え、売上を目標としています。

このような信念に基づいているのであれば、売上を目標にするのもありだと考えます。
ただし、一般的には限界利益を目標とすることを推奨します。

まとめ

売上ではなく、限界利益に着目しよう!

限界利益の目標の立て方は、次回ご紹介します。

限界利益を増やす方法や限界利益率を高める方法は、下記で紹介しております。

この記事を書いた人

【プロフィール】
大学院(建設工学専攻)修了後、建設業出身の技術者として従事後、大手コンサルファームで多くの経営支援を実施してきた、建設業の業務と経営に精通した建設業専門の中小企業診断士を務めます。
【執筆実績】
・雑誌
 月刊誌「税経通信」 中小企業のビジネストレンド
 月刊誌「企業診断」 プロコンたちの流儀
 週刊誌「帝国ニュース千葉県版」 中小企業経営のツボ

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